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北海道ヒッチハイク旅行記 |
第2日:名古屋寝心地の悪いテントの中でうつらうつらとしたと思ったら、僕は突然の爆発音にたたきおこされた。 誰かが打ち上げ花火をあげて騒いでいるのだ。強烈な閃光でテントの中まで明るくなる。なんだか照明弾の光の下を逃げ惑っている歩兵になったような気分だ。 それがようやくおさまったと思ったら、誰かが公園でトランペットの練習を始めた。「プウウウウウ、パプウウウウ……」。しばらくして今度は近くの道路にヤンキーが車を停めてケンカを始める。うるさい。 午前3時を回り、ニワトリが鳴き出したので、僕は眠るのをあきらめてテントから出た。まだ暗い。公衆便所で顔をあらう。さわやかな朝だ。荷物をテントに残したまま、静まり返ったビジネス街を歩くことにする。 しかし本当にホームレスの多い街だ。眼を醒ましたホームレスが街中を徘徊している。とりあえず、きのう降ろしてもらったテレビ塔まで歩く。駐車場を改造したような意味もなく広い公園があったので、僕はホームレスにまじってベンチに横になった。 空を見上げると、ビルで四角く切り取られた高い空を、鳥が数羽横切っていった。自分までホームレスになったような錯覚をおぼえる。ふと、ホームレスの人は毎日なにを考えて生きているんだろうと思う。社会のシステムからはみ出してしまったという点では僕も同等だ。僕は24にもなってまだ学生を続けている。大学を出たあと、僕はいったいどうなってしまうんだろう。何をすればいいんだろう。
このまま一気に新潟までヒッチハイクしたい気持ちだったが、今日はそれができない理由があった。 名古屋にはマルコさんが住んでいた。パソコン通信で知り合ったひとつ年上の女の子だ。ヒッチハイクのことを話すと、マルコさんは「晩ごはんおごったげるから名古屋に寄っていったら?」と言った。社交辞令だと思っていたら、待ち合わせ場所を指定した地図が本当に送られてきた。僕は少しの後ろめたさを感じながらも、今日の6時に待ち合わせをする約束をしたのだった。夜まではこの街で時間をつぶさなければならない。 僕はもといた公園に戻り、テントをたたんだ。セミが鳴き出し、陽射しが徐々に強くなる。僕は木陰を見つけるとベンチにすわり、ひたすら本を読んですごした。 9時頃になって、どこからともなくお年寄りが大量に集まってきて世間話をはじめた。僕は聞き耳をたてた。どうやら戦争中の思い出話で盛り上がっているようだ。そうか。もうすぐ終戦記念日か。 ここはどうやらお年寄り連中のたまり場になっているらしい。話に参加するわけにもいかず、なんだかいづらくなってきた僕は場所を変えた。別の木陰を見つけて寝転がった。ゆうべ満足に眠れなかったせいか、急激に睡魔が襲ってきた。 夢うつつの中で、雨の音がする。どしゃぶりの雨音だ。驚いて起きるとそれは雨音じゃなくて、何十匹というセミの鳴き声だった。 いつのまにか昼をまわっている。僕は再び読書に専念した。他に何もすることがないからしかたがない。とにかく時間をやりすごすしかないのだ。 そしてようやく夕方の6時になった。 名古屋駅に現れたマルコさんはいかにもOLらしい服装に身をつつんで立っていた。前に一度オフ会で会っているので顔はおぼえている。でも友達同伴だ。やっぱりというかガッカリというかほっとしたというか……。 でもマルコさんの歓迎ぶりは尋常ではなかった。僕たちは3人で居酒屋に行ったのだが、マルコさんはまるで我がごとのようにひとりではしゃいでいた。 「だいじょうぶ? 身体こわしてない?」 まるで子どものような扱いである。これでもかと言わんばかりに母性を注がれ、僕もさすがに気持ちが揺らいだ。それも大きく揺らいだ。今日友達同伴で来た理由を、僕はかなりまわりくどい言いかたでそれとなくきいてみた。 マルコさんは一瞬困ったような表情をした。 「そりゃあやっぱり、男と女がふたりっきりで会うってのは……。ねえ? あたしも彼氏いるわけだし……」 そうか。そうだ。僕はいったい何を勘違いしているのだ? そうだ! オレにはユミちゃんがいるというのに。オレとしたことが! 僕はふたりにさわやかにサヨナラを言うと、地図で見つけた白川公園に向かった。 木陰に強引にテントはってもぐりこむ。時刻は午後10時30分。 |
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