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北海道ヒッチハイク旅行記

第3日:名古屋再び

 目を醒ますとテントの中にいた。あたりまえだ。でも僕はまだ、テントでの寝泊りになじめないでいた。目を醒ましたとき、自分がいったいどこにいるのかしばらく理解できなかった。

 そうだ、僕はいま名古屋にいるんだった……。ようやく我にかえる。外は真っ暗だ。まだ午前3時半である。やっぱりあまりよく眠れないようだ。

 きのう別れ際にマルコさんに買ってもらったパンをかじりながら、地図をひろげる。

 きのう、マルコさんはしきりに『名古屋からフェリーで北海道に行ったら?』と僕にすすめた。それも一理ある。これ以上本州をさまよい歩いても意味がない。それに予算というものがある。2万円で北海道礼文島まで行くというのがこの旅のルールだ。でも実を言うと僕は、さらに緊急用に1万5千円を隠し持っていた。つまり合計3万5千円。できることなら2万円で礼文島まで行きたいが、すでに4千円近く使ってしまっている。陸路で行ったら何日かかるかわからないし、ここからフェリーに乗ったほうがかえって安上がりかもしれない。

 よし、フェリーに乗ろう!!

 夜明けと共に僕は荷物をまとめて南へ歩き出した。名古屋港にむかって。

 途中でコンビニに立ち寄り、時刻表でフェリーを調べる。そして唖然とする。苫小牧ゆきのフェリーが1万5千円!? 高すぎる!

 よし、やっぱりヒッチハイクじゃああ!!

 僕は回れ右をした。地図で見つけた春日井のインターチェンジまで数時間かけて歩く。僕の計画は、春日井のインターで車をひろい、中央自動車道・長野自動車道を経由して一気に長野市まで行くというものであった。例によってスケッチブックに『長野・のせて』と書いて道路わきに立つ。

 そして愕然とする。

 8車線もある広い道路に面したインターチェンジで、大量の車が猛スピードで分岐点につっこんでいく。車が多いのはいいのだが、どの車もまったくスピードを落とそうとしない。殺気だった雰囲気。車のほうも停まるに停まれないだろう。下手にスピードを落とすと玉突き事故をおこしそうだ。僕もこんなところにボーッと突っ立っていると車にはねられそうなので、すぐにあきらめて歩き出す。

 高いけどやっぱりフェリーに乗るぞ!!

 僕は再び回れ右をして、名古屋港に向かって歩き出した。しかし地図でみると……何十キロあるだろうか。途中で少しだけバスに乗り、降りて再び歩き出す。暑い。セミが鳴いている。

 すでに午後3時。ついに海が見える。埋立地に囲まれた、角張った海。コンテナが無限に連なる道路をさらに歩き、僕はついにフェリーのりばに到着した。

 でも何かがおかしかった。

 誰ももいない。ガランとしている。ターミナルビルに行くと、ガラス扉に張り紙がしてある。

 『本日休航。苫小牧ゆきは奇数日に出航です』

 僕はターミナルの階段に力なくへたりこんだ。

 モップを持ったビルそうじのおっさんが、ニヤリと笑って通りすぎた。

 30分後、僕は防波堤にすわりこんで海を見ていた。

 これからどうしよう。あしたの夜までフェリーを待つ気力はない。かといってヒッチハイクで日本海側にぬけるのもたいへんだ。第一、だれも乗せてくれそうにない。

 もう帰ろうか……。ゆっくりと形を変えてゆく入道雲を見ながら、ふとそう思う。いま帰れば『楽しかった名古屋旅行』ということでハッピーエンドになるだろう。ムチャして北海道まで行ってもつらいだけだ。

 僕は立ち上がった。名古屋駅に向かって歩き出した。

 午後6時。名古屋駅は会社帰りの人であふれている。ふと、『電車で日本海側にぬけようか?』と思う。どうして今まで気づかなかったんだろう。駅で調べると、名古屋から普通電車で5000円で新潟県直江津まで行ける。直江津から北海道ゆきのフェリーが5000円。つまり合計1万円で北海道に上陸できる計算になる。

 とりあえず、きのうと同じ白川公園で野宿することにする。靴を脱ぐと指先から血がにじんでいた。じゃまくさいのでテントは張らない。ベンチに寝袋ひろげてもぐりこむ。

 そして翌日、僕は旅のルールをひとつ破った。

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