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北海道ヒッチハイク旅行記 |
第5日:北海道岩内フェリーの中はまさに天国だった。 2等客室だから、広いだけの部屋で30人がザコ寝するのだが、毛布と枕があるというだけで嬉しい。それにフェリーには風呂というものがある。僕は大阪を出てからまだ1度も風呂に入ってなかったのだ。出航を待たずにさっそく汗を流す。給湯室で勝手にお湯をもらい、乗船する前に買ったカップめんを食べると、僕は毛布にくるまって眠りについた。 目を醒ますと朝の6時だ。船内ロビーに行ってフカフカのソファにすわり、煙草を吸う。リッチな気分だ。備えつけのテレビがニュースを流している。フーテンの寅さんこと渥美清が亡くなったらしい。特に興味はないが、受動的に見続ける。 そのあとはとにかくひまだった。ソファで本を読んだり日記をつけたり昼寝をしたり・・・・・・。時間がとてつもなくゆっくりと流れていく。全国地図をひろげてみるも、旅の性格上まったく計画のたてようがない。船内にレストランがあるけれども値段が高くて入れない。 デッキに出ると強風が吹いている。甲板から見下ろすと海が真っ黒な渦を巻いていた。誤って海に落ちてもきっと誰も気づかないだろう。そう思うとゾッとする。考え出すとはまってしまいそうなので僕はまたカップめんを食べる。 午後4時。再びデッキに出ると水平線にうっすらと影が見えた。陸だ! ついに北海道にやってきたのだ。フェリーは目に見えないほどのスピードでゆるやかに陸に近づき、1時間後にようやく北海道岩内港に到着。船が港に接岸するようすに見とれていて、部屋にもどるともう誰もいない。あわてて荷物をまとめて船を降りる。 「ついにオレは北海道に上陸したのだ!」 嬉しくてしかたがない。もう夕方だけれど、できることなら早く移動したい。 地図帳を見る。ここから小樽まで60キロ。札幌まで100キロくらいか? いまからヒッチハイクして、札幌あたりまで行けないだろうか。やってみる価値はある。 スケッチブックに『札幌のせて』と書いて立つ。岩内という町は田舎だが、車の量はけっこう多い。いけるかもしれない。 そのとき、反対車線に1台の乗用車が停まった。 反対車線?? 僕は札幌方面に行きたいのに。窓が開いて、50すぎのおっさんが手まねきしている。 「あんた札幌に行きたいのー?」 なんて親切な人なんだ。僕のためにわざわざその『大きな道』まで乗せていってくれるという。 「あんた、オレの息子と同じくらいの年だからほっとけなくてねぇ」 国道5号線だ。しかし、民家もなければ街灯もない。だだっ広い畑の真ん中に、舗装された妙にきれいな道が1本走っているだけだ。 「ここなら誰か乗せてくれるだろ。・・・・・・ああでも、こんな時間だからねぇ・・・・・・」 気になるセリフを残しておっさんは走り去っていった。僕は小樽に向かって歩き出した。 結局、心配していたとおりになる。薄暗くなってきたかと思ったら、あっという間に夜になってしまったのだ。車は停まらない。暗すぎて見えないのかもしれない。自分の足もとすら見えないくらいの闇だ。明かりといえば、ときどき走りすぎる車のヘッドライトだけ。 「いっそのこと小樽まで夜どおし歩いていったろか」 しかし大きな問題があった。のどが乾いてきたのに販売機がない。コンビニなんてもちろんない。途中で行き倒れになってしまう可能性が大きい。 しかたなく、僕は岩内町のフェリーのりばまで歩いて戻ることにした。旅に出てからというもの無駄足ばかりだ。夜空を見上げる。降るような星空だ。地上は漆黒の闇なのに、空には無数の星々がうずまいている。これが北海道なのか。正直恐ろしい。星を見ているような気がしない。逆に星に見られているような気がする。 「俺ーがいたーんじゃお嫁にゃーゆけぬー♪」 無意識のうちに口ずさんでいる。人はこういう状況下に置かれると思わず唄ってしまうものらしい。しかし、よりによってなぜ寅さんのテーマなのだ。もっと『スタンドバイミー』とか唄えば格好いいのだが。 12キロの道のりを3時間かけて戻った頃にはすでに夜の10時を回っていた。コンビニで買った弁当に喰らいついたあと、フェリーのりばの近くの砂浜にテントをはってもぐりこむ。もうくたくたで動けない。 |
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